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逃げたアフリカバチ
1958年までのブラジルではセイヨウミツバチが養蜂の主人公でした。
刺されたときの毒性はそんなに強いものではありません。
農家では家族で食べるハチミツを採るためにミツ蜂を飼っていました。
それでも、もっと危険性を下げるために
「針の無いハチ」の研究もされていました。
しかし、このセイヨウミツバチのミツの生産性は低く
「針無しバチ」の場合は更に劣ることから
研究者たちは外国種のハチとの交配による品質の改良を考えたのです。
1956年、アフリカから140匹の
Apis Mellifera Adansonii(学名)の女王バチが輸入されました。
このハチはとても乱暴で、毒性も在来種よりずいぶん高く危険でしたが
刺されたときの毒性のことよりも
ミツの生産性を上げようという意見が優先したからでしょう。
たしかに働き者でミツの生産性に優れていました。
運命の事件が発生したのは1957年です。
サンパウロ州リオ・クラーロ市の近くの研究所で
検疫のために保管観察されていた女王バチのうちの26匹が
係員の不注意のために逃げ出したのです。
セイヨウミツチバチもApis属の Mellifera種ですから
逃げ出したアフリカバチとの交配が可能です。
昆虫に詳しい 白岩康二郎 さんは次のように解説しています。
「種とは、何匹かの昆虫が、共通の形態や性質を持ち
その雌雄が野外で自由に自然に交尾し
受精卵が異常なく成虫まで育ち
しかも代々健全な子孫が育っていく個体群の事を指します」
逃げ出した女王蜂たちは、屋外の自然の中で
同じ種のセイヨウミツバチと交配を重ねることになったのです。
こうして「アフリカ化セイヨウミツバチ」が急速に増えていきました
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写真はアフリカ化したブラジルのセイヨウミツバチです。
まるで運命のいたずらであるかのように、アフリカ化したミツバチは
ミツの生産性がうんと高くなったのです。
その比率は在来種セイヨウミツバチの約六倍だといわれています。
しかし、その乱暴さは優性遺伝のためか
ますます激しいものになってしまったのです。
家畜や人が刺されて死亡する事件が起き始めました。
そして交配種のハチの生息範囲は
主として熱帯の北に向けてどんどん広がり始めたのです。
現在ではメキシコを通りこしてUSAのカリフォルニア州に及びます。
この様子を 梅谷献二さんの虫の雑学のページ は地図で解説しています。